マイボーム腺炎
概要
眼瞼(がんけん=まぶた)の縁にあるマイボーム腺は、涙液の油成分を分泌することで涙液の蒸発を防ぐ役割をしています。
マイボーム腺炎は、感染やマイボーム腺の閉塞により分泌物が貯留し炎症をおこした状態をいいます。
1ケ所で炎症が起きる場合もありますが、同時に複数ヶ所で炎症を起こすこともあります。また、アレルギー体質の犬に発症しやすい傾向があります。
マイボーム腺にできる炎症には、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」があります。
「麦粒腫」はマイボーム腺に細菌が感染して急性炎症を起こしたもので、いわゆる「ものもらい」のことです。「霰粒腫」はマイボーム腺が詰まって慢性的な炎症を起こしたものです。
なお、高齢犬ではマイボーム腺が腫瘍化し、眼瞼の表面にイボ状の突起物を形成することがみられます(マイボーム腺腫)。
特に眼瞼の内側にできた腺腫は角膜を刺激するため、不快感を伴い角膜炎の原因になります。マイボーム腺腫の治療は、外科的に腺腫を切除し縫合します。
原因
「麦粒腫」はマイボーム腺に細菌感染(主に黄色ブドウ球菌)が起こることで生じます。感染の程度により、眼瞼周辺が全体的に腫れる場合と局所的にイボのように腫れる場合とがあります。
「霰粒腫」はマイボーム腺の導管(分泌物の通り道)が閉塞し、分泌物が貯留することが原因で慢性的な炎症を起こし、眼瞼の内外に硬結(こうけつ=しこり)が生じます。
症状
眼瞼の周辺にニキビやイボのような小さなできものができます。また、瞼の縁が赤く腫れ上がり、目が開けづらくなったり目ヤニや涙液が多くなったりします。
さらに痒みが伴うことも多く、眼をこすったり周囲にある物に顔をこすりつけたりするので、角膜に傷がつくこともあります。
治療
「麦粒腫」、「霰粒腫」のどちらも眼瞼が腫れますが、細菌感染が原因の「麦粒腫」とマイボーム腺の閉塞が原因の「霰粒腫」とでは治療方法が異なります。
「麦粒腫」の治療は細菌感染が原因ですので、抗生物質の投薬で比較的早く改善します。
「霰粒腫」の場合はマイボーム腺が詰まってしまうことで起きますので、結膜を切開してチーズ様の貯留物を強制的に排出させたり、マイボーム腺と導管、開口部を含めた霰粒腫部分を切除したりします。
外科的処置が終わった後の治療は、抗菌剤の内服や点眼薬、眼軟膏による感染予防、あるいは炎症反応を抑えるため消炎剤を使用したりします。
また、犬が目を気にする場合は、引っかいてしまわないようにエリザベスカラーを装着することもあります。
当院での症例
【犬 チワワ 8歳】
まぶたが腫れているとのことで来院。マイボーム腺炎を疑い、内服と軟膏を処方しました。
1週間後、まだ腫れが引かなかったため点眼薬を処方したところ、徐々に腫れが少なくなり、良くなってきました。
【犬 ボストンテリア 6歳】
まぶたの腫れを主訴にご来院されました。左眼の上眼まぶたが赤く腫れておりマイボーム腺炎と判断し、内服薬と点眼薬を処方しました。
3週間薬を服用し、点眼した結果、まぶたの腫れを抑えることができ、治療終了といたしました。