膿皮症ってどんな病気?
膿皮症とは、皮膚に細菌が感染することによってかゆみや脱毛、皮膚の赤みや湿疹を引き起こす皮膚病です。
膿皮症の原因は、皮膚表面の毛穴への細菌感染であることが多いです。膿皮症では、膿疱と呼ばれる膿が貯留した水泡やフケ、円形の脱毛がみられます。
最初は赤みがあったところが黒くなり脱毛しています。
膿皮症でお腹にかさぶたや赤くなっているところがみられます。
膿皮症になるのは
どうして?
表在性膿皮症の原因となる細菌は、ほとんどがスタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)という細菌で、一般的に「ブドウ球菌」と呼ばれます。
この細菌は皮膚にトラブルのないワンちゃんの皮膚表面にも存在している常在菌のひとつです。
そのため、膿皮症は他のワンちゃんから細菌が感染して発症するのではなく、皮膚や皮膚のバリア機能の異常によって、皮膚に元々いた細菌が過剰に増えることで発症すると考えられています。
そして、その感染を引き起こす要因として、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などのホルモン異常や、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が背景にあることが多いです。また、皮膚バリア機能が未熟な子犬での発症も多くみられます。
どうやって
膿皮症を診断するの?
皮膚の状態で膿皮症を疑うことは可能ですが、膿皮症の他にも同じような状態になる病気もあるので、注意深く診断しなければなりません。
膿皮症の診断の基本は、病変部の皮膚から原因となる細菌を顕微鏡で検出することです。抗菌薬を使用してもなかなか良くならない場合には、必要に応じて感受性試験(細菌を培養し、どの抗菌薬が良く効くかを調べる試験)や、膿皮症を引き起こすようなホルモン異常・アレルギー疾患といった基礎疾患についての検査も実施します。
膿皮症の治療は
どうやるの?
膿皮症の治療は、症状の程度に応じて使い分けます。症状が比較的軽い場合には、シャンプーや抗菌作用のある外用薬を用いて治療し、重症の場合やシャンプー・外用薬に反応がない場合には、抗菌薬の内服によって全身的に治療を行います。通常は、比較的治療に反応がみられることが多い病気ですが、再三繰り返すようであれば、基礎疾患(ホルモン異常やアレルギー疾患など)の精査、治療が必要となります。
当院では、獣医学的な根拠に基づき検査・診断・治療を行っております。なかなか良くならない、何度も繰り返してしまう場合には丁寧に全身を検査することで、隠れた病気がないか検討していきます。膿皮症が疑われる症例でお悩みの場合には、お気軽にご相談ください!
当院での症例
犬 フレンチブルドッグ 3歳
陰茎周囲および腹部のかさぶたや赤みに気が付き、来院されました。
皮膚検査の結果から、膿皮症と診断し、内服治療を始めました。
投薬から2週間後、かゆみや皮膚の状態はよくなり、治療終了といたしました。
犬 トイプードル 1歳
お腹に湿疹がみられるということで来院されました。内股や陰部周辺に小さな膿疱がみられたため、膿皮症と診断、翌日にトリミングしていただきましたが、変わらないため、内服薬と外用薬を処方しました。
投薬から1週間後、経過は良好で、赤みや痒みが減ったため、治療終了といたしました。
犬 ミニチュア・ダックスフンド 11歳
お腹の皮膚が赤いとのことで来院されました。お腹の皮膚が環状にめくれていたため、膿皮症と診断し、内服薬を処方しました。
内服薬が奏功し、2か月後には発赤と炎症を抑えることができました。ただし、まだ痒みは残っているため、引き続き投薬を続けています。
犬 ミニチュア・ダックスフンド 6歳
皮膚の発疹を主訴に来院されました。
腹部には発赤が認められ、皮膚検査の結果から、膿皮症を疑い、内服薬を処方しました。
1週間後、腹部に発赤はなく、良化したため、残り4日分の内服薬を飲み切って治療終了としました。
犬 ウェルシュコーギー 3歳
腹部の湿疹を主訴にご来院されました。
左鼠径部の皮膚には、発赤やフケがみられました。皮膚検査の結果から、内服薬を処方しました。
1週間後の再診では、赤みがなくなり、良化したため、残りの内服薬を飲み切って治療終了としました。