アニコムの麻酔科

アニコムグループの動物病院では、執刀医と麻酔科医をそれぞれ配置することできめ細やかな麻酔管理を実施し、どうぶつのストレスを低減させています。
安全な手術を行い、術後疼痛管理をしっかりとすることで回復を早めることを可能にしています。
(どうぶつの状態、症状の程度、手術のリスク等を勘案し執刀医が麻酔管理を行う場合もあります)

① 麻酔の重要性 

麻酔とは、手術の痛みや怖さを忘れさせたり、体の力が抜けるようにしたりすることで、どうぶつの精神的・肉体的ストレスを軽減することを目的とした処置を指します。麻酔と聞くと「リスクがあるのでは?」と感じられる飼い主様も多いかもしれません。ただし、どうぶつの場合、正確な検査や手術の安全性を高めるためにも、麻酔は重要になります。当グループ病院では麻酔担当医の細やかな麻酔管理により、どうぶつの負担を最小限にコントロールすることが可能です。

② 麻酔科医による最適な麻酔管理

高齢であったり、慢性疾患にかかっている場合、健康などうぶつと比較して麻酔リスクが高くなることが知られています。
例えば、心臓病による不整脈や低血圧が起こったり、腎臓病による麻酔薬の排泄が遅れるといったリスクが予想されます。これらのリスクを少しでも減らせるよう、当グループ病院では麻酔担当獣医師が、どうぶつのそれぞれの状態に合わせた麻酔薬の選択行い、手術中も常にどうぶつを管理し、麻酔量の増減や、様々な薬の投与により、痛みや麻酔の効果をコントロールします

③ 麻酔の種類

オピオイド

主に脳に作用して痛み止めの効果を発揮するお薬です。
例:モルヒネ、フェンタニル、ブトルファノールなど

鎮静薬

眠るような作用があります。意識が完全になくなるわけではなく、呼びかけには反応することもあります。全身麻酔薬をスムーズに使用するために事前処置として使うことがあるお薬です。
例:メデトミジン、ミダゾラム、ジアゼパムなど

全身麻酔薬

完全に意識がない状態を作り出すことができ、手術のストレスを忘れさせます。薬の種類は大きく2種類あります。

1.吸入麻酔薬
ガス状で呼吸とともに吸い込ませて作用します。
例:イソフルラン、セボフルラン

2.注射麻酔薬
血液に直接お薬を入れることで効果を発揮します。
例:プロポフォール、アルファキサロンなど

局所麻酔薬

皮膚や神経など、局所に使用することで痛みを感じないようにするお薬です。人では歯の麻酔としてよく用いられます。全身麻酔に局所麻酔を組み合わせることで、鎮痛効果を得るのみならず、他の麻酔薬の必要量を減少させることができます。
例:リドカイン、ブピバカインなど

④ 手術を始めるにあたって ~麻酔の流れ~

1.術前検査 (血液検査・尿検査・レントゲン検査・腹部超音波検査・心臓超音波検査など)

その子の状態に合わせた必要な全身の検査を行います。

2.麻酔導入

どうぶつを無意識状態にします。それと同時に呼吸管理をするために挿管(気管に気管チューブを挿入)します。麻酔導入は麻酔覚醒とともに麻酔下において最も事故が起こりやすい過程と言われています。そのため速やかな気道確保とモニタリングによる全身管理が重要となるため、当グループ病院では執刀医とは別に麻酔科医が担当して行います。

3.手術

剃毛や消毒などの手術前処理をおこなったのち、手術を行います。

4.麻酔維持管理

麻酔維持には吸入麻酔や注射麻酔を動物の状態に合わせて使用を検討し、持続的に投与することで麻酔状態を継続させます。

安定した麻酔状態を維持するために、麻酔深度の調整をしたり、血圧や心拍数を補正する薬剤を使用したり、鎮痛剤を使用します。

この麻酔維持管理は長時間にわたるので、術後の合併症を防ぐためにも重要な処置と言えます。

⑤ 術後覚醒 

麻酔から目覚めるときは麻酔導入と合わせてもっとも事故が起きやすいことが知られています。
麻酔科医がどうぶつの心拍数などを参考に測定しつつ、特に慎重にどうぶつの状態を観察しながら行っていきます。
自発的な呼吸を行っていることや体に酸素が行き届いていること、意識の状態を確認し気管チューブを抜管します。

⑥ 術後疼痛管理

手術室から入院室にうつしてからどうぶつの様子を観察し、体温が低ければ加温、痛がる様子であれば鎮痛薬の追加投与、過度の興奮があれば鎮静薬を使用し、術後に痛みがなく恐怖や不安を感じずに快適に過ごせるよう、疼痛の程度を確認しながら、術後疼痛管理を行います。

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