口の中の粘膜である舌や口の中の表面部分に炎症を起こす病気で、赤く腫れて潰瘍が生じ、出血や痛みも伴うことが多いため、ネコちゃんの食欲の低下などもみられる病気です。炎症・潰瘍が口腔内全域に及ぶ重度のものから、口の中の一部のみに炎症が生じる軽度なものまで、さまざまな程度の病態が存在します。
ネコちゃんの口内炎の原因は、まだはっきりとは分かっていませんが、カリシウィルスなどのウィルス性感染症やPasteurella spp.やTannerella forsythiaなどの細菌感染、口腔内にいる細菌の多様性の低下、もしくはこれら口腔内微生物に対する免疫の過剰反応などが原因の1つであると考えられています。
口腔内の粘膜が炎症を起こし、口周りに強い痛みが生じます。多量の涎、口からの出血、口臭の悪化、食事量の低下、体重の減少、食事中に奇声を発したり、強い痛みにより性格が変わり攻撃的になることがあります。
口内炎は、口腔内のさまざまな微生物と、それに対する過剰な免疫反応が複雑に関与した炎症性疾患であると考えられています。そのため治療は、口腔内の微生物の可能な限りの除去と過剰な炎症反応をコントロールすることが基本方針になります。
口腔内の微生物は、歯の表面だけでなく歯周ポケット内にも多く存在し、歯石除去・スケーリングなどによって一度完全に除去することが出来たとしても、同じ部位に再び付着してしまうケースが多く存在します。そのため部分的な抜歯ではなく全臼歯抜歯(全ての奥歯を抜歯すること)や全抜歯が治療のゴールドスタンダードとなります。
抗生物質やステロイド薬、免疫抑制剤などを使用した内科的な治療は、一時的には症状の改善がみられても完治にはつながらないと考えられており、抜歯などの外科的な治療の補助として行われる場合が多いです。
しかし、口内炎を発症して早期に全抜歯を行った場合でも、5~10%の症例で症状の改善がみられないとされており、このことを踏まえた上で治療方法を選択する必要があります。また、ネコちゃんの状態や年齢的な問題により、全抜歯などの長時間の外科処置が難しいと考えられる場合、短時間の麻酔での歯石除去や部分的な抜歯が治療の選択肢となることもあります。
口内炎における治療の基本は、全臼歯抜歯や全抜歯などの外科的な処置になります。しかし、全臼歯抜歯や全抜歯を行っても症状の改善が見られない場合や、ネコちゃんの状態によりこれらの外科的な処置が難しいと判断された場合、もしくは外科的な処置と内科療法によって症状は改善されているものの、薬の副作用や症状の再発を繰り返してしまう症例に対して、当院では間葉系幹細胞を用いた細胞治療(再生医療)を実施しています
間葉系幹細胞には、従来の治療薬とは異なる作用で炎症を抑え、免疫バランスを調整する働きがあるため、既存の治療では反応の乏しかったネコちゃんに対しても、口腔内の炎症を抑え症状を改善させる可能性があります。
猫の口内炎についてお悩みの飼い主さまがいらっしゃいましたら、当院までお電話いただくか、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。
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CFCとは、国際猫医学会(ISFM:International Society of Feline Medicine)が提唱する国際基準を満たした動物病院に認定される「ネコにやさしい病院」のことで、世界的に普及しています。認定を受けた病院は、以下の基準をクリアしています。