2019/02/19
犬アトピー性皮膚炎とは
人と同様に犬にもアトピー性皮膚炎があるのをご存知でしょうか?
犬のアトピー性皮膚炎は、最も一般的な犬のアレルギー性の皮膚病で、良くなったり悪くなったりを繰り返す、痒みを伴う湿疹が特徴です。
この病気は、生後6ヶ月から3歳頃に最初の症状が出るのが一般的ですが、より高齢で発症するケースもあり、発症には、犬種や居住地域などの多くの要因が関与すると考えられています。
犬種によってアトピー性皮膚炎の発症率に差があることから、遺伝的な影響が考えられており、海外でのアトピー性皮膚炎を発症しやすい犬として、ラブラドールレトリバー、ウエストハイランドホワイトテリア、ミニチュアシュナウザー、パグ、ヨークシャーテリアなどが報告されていますが、これらに加えて国内では、柴犬での発症が多いように感じています。
犬アトピー性皮膚炎の原因
体の炎症反応は、細菌やウイルスなどの体の外から侵入してきた敵と戦うのに必要な反応ですが、アトピー性皮膚炎では本来戦う必要のないものに対してまで過剰に反応し、皮膚に炎症が起きてしまうことが原因です。
そしてこの過剰な免疫反応が起きてしまう原因として、人のアトピー性皮膚炎では、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)や皮膚のバリア機能の低下と考えられており、犬でも概ね同様の理由でアトピー性皮膚炎が発症すると考えられています。
犬アトピー性皮膚炎の診断
犬アトピー性皮膚炎の診断は、病歴や左右対称性の湿疹などの症状で疑い、他の痒みを引き起こす病気を除外することで診断していきます。
除外すべき病気として、食物アレルギー、ノミや疥癬の寄生、細菌や真菌などの皮膚の感染症が挙げられます。
アトピー性皮膚炎の診断時には、似たような痒みを起こす病気も多いため、安易な診断をせずに、注意深く診断をしていきます。
また、室内飼育のアトピー性皮膚炎の犬では、環境アレルゲンとして、ハウスダストマイト(コナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ)に対する反応が強くみられるのが特徴的です。
補助的にアレルギー検査を行い、アレルギー反応を起こす原因を調べますが、アレルギー検査のみでアトピー性皮膚炎を診断することはできないので注意が必要です。
<犬アトピー性皮膚炎を疑う特徴>
- 主に室内飼育
- プレドニゾロン(副腎皮質ホルモン剤)に反応する痒み
- 発症時は皮膚病変がなく痒みのみ
- 前足に病変がある
- 耳介に病変がある
- 耳介辺縁は病変がない
- 腰背部は病変がない
犬アトピー性皮膚炎の治療
犬のアトピー性皮膚炎は、生涯にわたる治療が必要とされ、治療中も症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。
この病気の治療法として、ある特定の薬のみで、全ての犬の治療ができることはなく、症状や状況に応じてその犬に応じた治療を行う必要があります。
例えば、急激な痒みが出た場合の治療と、そのような痒みがぶり返さないようにする治療とでは、その治療方法は異なってきます。
そして、治療効果を最大限に発揮すると同時に、費用と副作用を最小限に止めることを考えながら治療を行なっています。
犬のアトピー性皮膚炎の治療に関して、3つの柱を考えながら治療を行なっています。
- 痒みを抑える治療を行うこと
- スキンケアを行うこと
- 増悪因子を避けること
1.の痒みを抑える治療の代表的なものとして、痒みが強い場合の治療として、プレドニゾロン(副腎皮質ホルモン剤)やオクラシチニブなどを用いており、痒みがぶり返さないための治療としてシクロスポリンや減感作療法などを用いています。
2.のスキンケアの例としては、低刺激性のシャンプーや必須脂肪酸サプリメントを使用し、皮膚を清潔に保ち保湿を行っていきます。
3.の増悪因子を避ける例としては、アレルギー検査の結果に基づくアレルゲンの回避や、皮膚の細菌感染や真菌感染があればそれらの治療を行なっていきます。また、ストレスは痒みを悪化させることが知られているのでストレスの無い生活を送ることも大切です。
犬アトピー性皮膚炎は、生涯にわたる治療を必要とする病気です。
そのため、ご家族と相談させていただき、さまざまな治療法について検討しながら治療を行う必要があります。
新宿御苑前どうぶつ病院に皮膚科を開設しました
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新宿御苑前どうぶつ病院 皮膚科
日本獣医皮膚科学会認定医
獣医師 春日 陽一郎