2020/03/04
ステロイドホルモンとは
ステロイドホルモンとは、生殖腺や副腎において合成されるホルモンであり、性ホルモン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドに分類されます。その中で医薬品として最も日常的に使用されているのが、糖質コルチコイド系のステロイドホルモンです。
そして、糖質コルチコイドとして動物病院で最もよく使用されているのが、プレドニゾロンです。
プレドニゾロンの効果(メリット)
皮膚の炎症や痒みを抑える効果があります。また、自己免疫疾患による皮膚病に使用します。
アトピー性皮膚炎のガイドラインでは、急性期の痒みに対して0.5~1.0mg/kg/日の使用が推奨されています。
プレドニゾロンは安易に使用すべき薬ではありませんが古くから使われ使用実績が豊富で以下のようなメリットがあります。
・安価
・即効性がある
・治療実績が豊富
プレドニゾロンの副作用(デメリット)
プレドニゾロンにはメリットだけではなく副作用もあります。
・飲水量、排尿量の増加
・神経質になるなどの行動の変化
・肝酵素の上昇
・筋力の低下
・感染症にかかりやすくなる
また、長期的に投与することにより、上記の症状が出る医原性クッシング症候群とよばれる状態になることがあります。
医原性クッシング症候群とは
クッシング症候群とは、糖質コルチコイドが体内に過剰に存在する状態をいいます。
副腎の腫瘍などが原因で副腎から大量に糖質コルチコイドが分泌される状態を自然発生クッシング症候群というのに対し、薬として長期間過剰に糖質コルチコイドを投与されたことによって起こる状態を医原性クッシング症候群といいます。
自然発生、医原性どちらも症状は似ており、多飲多尿、多食、腹囲膨満、左右対称性の脱毛、筋力の低下がみられます。
しかし、両者の状態は全く異なり、自然発生では副腎から多量の糖質コルチコイドが産生されているのに対し、医原性では投薬により副腎が萎縮し機能も低下しているので、糖質コルチコイドはほとんど産生されていません。そのため、医原性クッシング症候群の状態では急にプレドニゾロンの投薬を中止することは危険だとされています。
▲医原性クッシング症候群の犬:腹囲が膨満し、皮膚が薄くなっている
プレドニゾロンの上手な使い方
現在では、プレドニゾロンに代わる副作用が少ない薬も開発が進んでおり、以前に比べればプレドニゾロン頼みの場面は減ってきたように思われます。
しかしながら安価で、古くから使われている治療実績や治療効果を考えるとどうしてもプレドニゾロンを使用しなければならない場合も多くあります。
特にアトピー性皮膚炎では、生涯に渡る治療が必要なことが多く、どうしても長期間プレドニゾロンが使用されることがあります。
さらに、自己免疫疾患においては、より多い量を長期間飲まなければなりません。
副作用が出てしまうからとプレドニゾロンを減らすことで病気が悪化してしまうこともあります。
副作用に気を付けながら、その子その子の病気の状態に合わせて投与していくことが大切です。
まとめ
プレドニゾロンは決して安易に使用すべき薬ではありませんは、即効性があり、確実に効果が見込め、治療実績が豊富な点で、新しい薬よりメリットがある場合も多いです。
長期間にわたる使用では、副作用が出ないように慎重に使用する必要があります。
新宿御苑前どうぶつ病院 皮膚科
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新宿御苑前どうぶつ病院 皮膚科
日本獣医皮膚科学会認定医
獣医師 春日 陽一郎