犬・猫の歯石取りについて
歯石取りとは?
ワンちゃんの、ネコちゃんの歯石を取る処置です。歯石除去、スケーリング、クリーニングなど呼び方は様々ですが全て歯をきれいにすることが目的です。
スケーラーという専用の器具を用いて歯垢や歯垢が固まってできた歯石を取り除いたり、歯周ポケットの中を洗浄してきれいにします。
ほとんどの歯石取りは動物病院にて全身麻酔にて行われます。しかし、身体の調子が悪かったり、高齢だったりする場合は全身麻酔ができない場合があります。ですので、歯石取りが必要となる前に歯磨きなどをしっかりして歯周病を防ぐことが重要です。
歯垢とは、食べ物による汚れと口腔内の細菌が混ざって歯の表面などに付着したもので、歯垢は歯磨きで取り除くことができる汚れです。しかし、歯垢が取り除かれずに2、3日経過すると、唾液中のカルシウムが沈着して石のように固くなり、歯石になります。人は歯が汚れると虫歯になりますが、ワンちゃんネコちゃんが虫歯になることは稀で、ほとんどが歯肉などの歯周病のトラブルになります。
歯周病とは?
歯肉炎と歯周炎の総称です。食べかすや細菌などの歯垢が、歯と歯ぐきの間にたまり、歯ぐきが炎症をおこしたものが歯肉炎です。この状態がどんどん進んでいくと、歯を支えている組織も壊れていき、歯肉以外の部分(歯周組織)にも炎症が広がり、これを歯周炎と言います。
歯周病は多くの子がかかっている病気で、2歳までにワンちゃんの80%、ネコちゃんの70%が何らかの歯周病にかかっているという最新のデータが出ています。歯肉炎は初期の状態で、可逆性ですが、歯周炎まで進行してしまうと不可逆性の疾患になります。
症状としては以下の流れで現れます。悪化してしまうと、炎症が歯の奥まで進んで口の外、すなわち目の下あたりまで穴が開いてしまったり、顎の骨が弱くなって折れてしまったり、時には命に関わるような症状を引き起こすこともあります。
- 口臭
- 歯茎の腫れや痛み、出血
- 歯ぐきなど骨を溶かしてマズル全体の腫れ、痛み、鼻血
- 細菌が他の臓器へ影響を引き起こす
原因
主に歯垢(プラーク)に含まれる細菌が炎症性物質や破壊酵素を出すことが原因になります。歯垢が歯石になるスピードは人よりも圧倒的に早く、歯垢は3日程度で歯石になります。歯石の表面はとてもざらついているため、歯石が付着することでその表面にさらに歯垢が付着しやすくなるという悪循環に陥ります。
治療
当院では全身麻酔下での歯石取り(歯石除去)を行っています。
歯周病が軽度の場合は付着した歯垢や歯石を除去するだけで済みますが、重度の歯周病になると抜歯や歯肉の縫合が必要になります。
Q&A
歯石取りはどのような処置をしますか?
- まず全身麻酔をかけます。
- その後に歯周病の進行度の確認のためにレントゲン検査やCT画像検査を撮影することがあります。
- プローブ(金属の細い棒)で歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の病態度をグレード分類をします。そのグレードに応じて治療内容を決定します。
- 大きな歯石は超音波スケーラーという機械を用いて破砕します。他にもハンドスケーラーやキュレットといった専用の器具で細かな歯石を除去します。
- 最後にブラシで研磨するポリッシングという処置を行います。
抜歯が必要な際はエレベーター、抜歯鉗子といった器具を用いて抜歯します。抜歯後は抜歯痕の大きさに応じて歯肉の縫合を行います。
痛みを管理するための局所麻酔や、細菌感染をコントロールするための抗生剤の投与を行うこともあります。
歯石取りの値段はどのくらいでしょうか?
歯周病の程度により大きく変化します。
抜歯なしの軽度の歯石だけの場合で20,000円~になります(麻酔代を含めます)。重度の場合は処置前の画像検査や抜歯の必要性などを考慮して治療内容をご相談させていただいております。
なお、別途術前検査費用や内服代が必要になります。
ひどくならないために自宅でできることはありますか?
軽度の歯肉炎の場合はハミガキで改善することもありますが、歯周炎まで進行してしまうとご自宅での処置だけでは改善は限局的です。既に歯石がついてしまっている場合は一度病院で歯石取りをしてからのご自宅での予防方法を考えていただくことをお勧めいたします。
歯周病を予防する方法はどのようなものでしょうか?
毎日のハミガキで歯垢を貯めないようにすることで予防が可能になります。ただしお口を触られることを嫌がったり、細部までハミガキが行き届きにくかったりしますので、歯周病を完全に予防することは困難です。
そのため歯肉炎が進行して歯周病になる前に病院で定期的に歯石取りをすることをお勧めいたします。
ハミガキが困難な子には院内でのハミガキ処置(無麻酔)に加え、ご自宅用のデンタルガムやデンタルジェルの処方をご相談させていただいています。ご希望の方はスタッフまでご相談ください。
無麻酔で処置できませんか?
当院では全身麻酔下での歯石取りを推奨しています。
無麻酔での歯石取りの処置は、歯周病の一番の原因となる歯周ポケット内の歯垢の清浄化には効果が限定的になると考えています。また無麻酔下での処置はその子に恐怖心や痛みを与えてしまう可能性があり、口を触ることをますます嫌がるようになることもあります。
当院では麻酔前の検査や最新の麻酔モニターをそろえていることもあり最低限の体の負担で処置が可能です。
麻酔下での処置が心配な方は獣医師までご相談ください。
保険は使用できますか?
既往歴やご加入の保険内容によって変わりますが、歯周病に対しての処置になると保険適用となるケースが多いです。
ハミガキ予防だけで済むような場合は保険不適応となることもありますので詳しくはご加入の保険会社にご確認ください。
抜歯の必要性は?
重度に進行して、歯周病の原因となってしまっている歯は残していても感染や疼痛の原因となります。そのために進行した歯は抜歯をしてあげたほうがその子のためになります。
抜歯の際は鎮痛処置を行いますが、抜歯後数日は柔らかいご飯を与えるようにしてください。
高齢ですが歯石取りはできますか。
高齢になってからも歯石取りの処置は可能です。
歯周病は若い子でも多いですが、年齢を重ねることで重症化し、高齢になってから痛みや出血などの症状を訴えてこられる方もとても多いです。
高齢になってからは麻酔前の術前検査で安全に処置できるか確認させていただき、場合によっては基礎疾患などの治療をしてからの処置をおすすめさせていただくことがあります。
当院での治療例
当院で歯石取りを行った症例になります。
処置前の写真です。赤点線部分に付着している歯石が確認できます。
大きな歯石を除去するために超音波スケーラーを使用しているところです。
喉の奥にはガーゼを入れて、洗浄液や歯石を誤嚥しないようにしています。
こちらの作業は音や痛みを伴うことがあるため、当院では安全のために全身麻酔下での処置をさせていただきます。
研磨剤で磨いているところです。
細かな歯石を除去し、表面を滑らかにすることで歯垢が再付着しにくいようにしています。
軽度の歯周病の場合はこの作業後、口の中を洗浄して歯石取り終了になります。
処置後の写真です。赤点線部分に付着していた歯石が除去され、綺麗になりました。
愛甲石田どうぶつ病院では、ハミガキ方法のご説明、歯周病の治療、歯石取り(歯石除去)を実施しています。
歯石が気になる方はお気軽にご相談ください。