ネコちゃんの膀胱炎
膀胱炎はどんな病気?
おしっこをためる役割をしている「膀胱」に、色々な原因によって炎症が起きる病気です。膀胱炎になると血尿や頻尿、排尿時痛そうに鳴く、トイレを失敗してしまうなどの症状がでます。
膀胱炎は繰り返しやすく、様子を見ようと放っておくと尿道閉塞という命に関わる状態になってしまうことがあるため早期発見、早めの適切な治療がとても大切な病気です。
原因は?
ネコちゃんの膀胱炎の原因は主に以下のようなものがあります。
- 膀胱結石
- ストレスなど生活環境由来
(検査で原因が特定できないもの) - 細菌感染
膀胱炎の原因は年齢によっても異なります。
10歳以下のネコちゃんでは、「特発性膀胱炎」や、「膀胱結石」による膀胱炎が多く、じつに55-75%ものネコちゃんが特発性膀胱炎といわれています。特発性膀胱炎では、尿検査をしても細菌や結晶(結石のかけら)が見つからないにもかかわらず、血尿や頻尿といった症状がでます。まだ原因不明な部分も多いですが、肥満やストレスなどが一因であると考えられています。
10歳以上のネコちゃんでは、半数以上が「細菌感染」や「膀胱結石」が原因となります。多くはないですが、膀胱など尿路系の腫瘍によることもあります。
診断方法は?
診断は尿検査にて細菌感染があるかどうか、結石の成分が出ているかどうかなどを確認します。また結石がないか、膀胱のかたちに異常がないかなどを確認するために超音波検査やX線検査 を行います。
膀胱炎を繰り返してしまうネコちゃんでは、細菌検査や膀胱の尿路造影検査(膀胱の形状確認などができるもの)が必要になることもあります。
治療方法は?
膀胱炎の原因に応じて治療を行っていきます。
細菌感染がある場合は抗生物質を投与します。膀胱炎の程度によっては消炎鎮痛剤が必要になることもあります。
結石による場合は、石の種類に応じて食事で石を溶かしたり、石を除去する手術などを行います。
特発性膀胱炎の場合は、特異的な治療薬はなく、ストレスを取り除くことが治療のひとつとなるため、ネコちゃんの生活環境(お水を飲む場所やトイレ、生活音など)にストレスとなるところがないか詳細に問診させていただき、改善につながるアドバイスをしていきます。よくあるストレス因子としては、トイレが小さい、トイレの数が少ない、一緒に暮らす他のどうぶつさんとの不仲などがあります。
- 投薬方法について
お薬で治療を行っていく場合、一般的には飲み薬を選択しますが、お薬の投与自体がネコちゃんにとってストレスとなってしまう場合は、注射での治療を行うこともあります。また、あまりお水を飲まないネコちゃんには脱水の改善や膀胱を洗い流すために点滴治療をすることがあります。
お薬の飲ませ方については、病院で丁寧にお伝えしますのでお気軽にご相談ください。 - フードについて
膀胱結石や結晶がある場合、石の種類に応じて療法食(特定の病気に対して、ミネラルなどの栄養バランスが特別に調節されているフード)をお勧めします。特発性膀胱炎ではストレスケアとなる療法食が効果的なことがあります。
尿の状態や年齢、全身状態を考えて適切なフードを選ぶことが大切です。フードを変更する際はぜひご相談ください。
また、ドライフードだけでなくウェットフードを与えることによって水分の摂取量が増え、おしっこの量が増えるため膀胱炎の予防につながります。 - サプリメントについて
療法食への切り替えがなかなか難しい、または膀胱炎を繰り返してしまうときに補助としてサプリメントを使用することがあります。サプリメントの中には、おしっこの性状(pH)を適切に保ったり、膀胱の粘膜の修復を助けるといわれているものがあります。
再発予防のために!
水分の摂取量を増やすこと、適正体重を保つこと、ストレスを減らすことが膀胱炎の予防につながります。特発性膀胱炎のネコちゃんは、約半数が一年以内に再発するという報告がありますので、膀胱炎を繰り返す前に出来る予防をしてあげましょう。
<飲水量を増やすために>
- 水皿の数を増やす
- ご飯とお水はとなりに置かない
(ご飯のにおいが水にうつるのを嫌うネコちゃんがいます) - ウェットフードの利用
- 好きな温度や好きなお皿を知る
(ひげがお皿にあたらない大きさで陶器がいいといわれています) - 流水タイプの給水機の利用
<適正体重を管理するために>
- ネコちゃんの体型を知る
- 食事管理、定期的な体重測定
- 猫じゃらしやキャットタワーを利用した運動
<ストレスを減らすために>
- トイレを清潔に保つ
- トイレの数はネコちゃんの数+1以上設置する
- 隠れられる場所をつくる
- ご飯やトイレは静かな場所にし、離れて置く
など
当院では丁寧にお話をお伺いし、ネコちゃんの性格や生活環境を踏まえて治療、再発の予防についてご提案いたします。
当グループ病院での症例
猫 ミヌエット 3歳
主訴:頻尿や血尿
腹部のエコー検査で、膀胱内に結石が見つかったため、内服薬の処方と、フードの変更を実施。
治療開始から2週間後、症状が落ち着いたため、内服薬は終了し、フードのみを継続。約2か月後の再検査では結石が消失したため、治療終了。
その後は、定期的に尿検査やエコー検査を実施。
猫 Mix 1歳
主訴:おしっこがでない
エコー検査や尿検査の結果、尿路閉塞はなく、膀胱炎であると考えられたため、内服薬を処方。
その後、症状は落ち着き、頻尿もなくなる。再度尿検査を行ったところ、ストルバイト結晶が確認されたため、フードを変更、食事療法を実施。
猫 スコティッシュフォールド 3歳
主訴:血尿
尿検査やエコー検査の結果から、膀胱炎として治療を開始し、内服薬を処方。
1週間後、症状は落ち着き、血尿がなくなる。
尿検査を行ったところ、ストルバイト結晶が確認されたため、フードを変更し、食事療法を実施。