犬のニキビダニ症
犬のニキビダニ症とは
犬のニキビダニ症は、毛包虫症とも呼ばれ、毛穴の中に寄生するニキビダニが過剰に増殖することで発症します。
犬に感染するニキビダニは、デモデックス・キャニス(Demodex canis)が主で、これは犬の毛穴に寄生しフケや皮脂を栄養としています。
実は、ニキビダニは健康な犬でも常に皮膚に存在し(通常母親から生後2~3日で移行)、これが何らかの原因で過剰増殖することで皮膚に症状が出始めます。
ニキビダニが過剰増殖した皮膚では、一般的に顔や四肢にフケや黒色の色素沈着そして脱毛といった症状が見られることが多いです。
▲子犬の頭部にみられた脱毛(ニキビダニ症)
▲検出されたニキビダニ(デモデックス・キャニス)
犬のニキビダニ症の原因
前述の通り、犬のニキビダニ症の主な原因は毛穴の中のデモデックス・キャニス(Demodex canis)ですが、他に皮脂腺の中に住むタイプ(Demodex injai)や皮膚表面の角層の中に住むタイプ(Demodex cornei)も報告されています。
また、ニキビダニが大量に増殖する原因として以下が挙げられます。
子犬 | 皮膚バリア機能が未発達 |
環境の変化に弱い | |
成犬 | 発情 |
妊娠 | |
外科手術 | |
免疫抑制剤の影響 | |
老犬 | 基礎疾患(ホルモン失調など) |
老化 |
犬のニキビダニの診断
毛検査や皮膚掻爬検査(皮膚の表面の一部を顕微鏡で見る検査)などの皮膚科検査で、ニキビダニを検出することで診断します。
しかし、一部のニキビダニの検出には、皮膚生検が必要(皮膚の一部を切り取る検査)となることがあります。
また、特に高齢のニキビダニ症では、ホルモン失調などの基礎疾患の有無を併せて診断していきます。
犬のニキビダニの治療
一般的には、ニキビダニの駆虫薬を使用して治療を行いますが、子犬のニキビダニ症は、症状が軽度であれば成長とともに自然に治っていくこともあります。
ニキビダニ症の駆虫薬は、注射によるものや経口投与するものがあります。
従来は、注射による治療を行うことが多く、この場合コリー系統(コリー、シェルティー、ボーダーコリー等)の犬種に重大な副作用が懸念されていました。
近年、経口薬でもニキビダニ症に有効とされる駆虫薬が広く販売されるようになってきており、効果や安全性が高いこちらを使用する機会が増えてきています。
また、シャンプー療法で毛包内の洗浄を行うことや、細菌感染が併発している場合には、抗菌薬を併用します。
時に、なかなか治癒しないニキビダニ症に遭遇することがあります。この場合には、丁寧に全身を検査することで、ニキビダニ症の悪化要因となる基礎疾患について検討していきます。
ニキビダニ症が疑われる症例でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。