犬が体をかく理由
犬のかゆみでお悩みの方はとても多いと思います。今回はそのかゆみの原因や診察について解説していきます。
かゆみとは
かゆみと痛みはよく比較されますが、両方とも大切な皮膚感覚です。以前は、痛みの神経が感じる弱い痛みが「かゆみ」であるといわれていましたが、今では痛みとかゆみは別々の神経であると証明されています。
かゆみは、「引っ掻きたくなるような不快な感覚」と定義されており、体を守る為の反応の一つであると考えられています。つまり、体にとって有害な物がついた際に、かゆみを感じることにより、体の異常が起きている場所を知らせ、それを掻いて取り除こうとする行動を起こす目的があると考えられています。
また、かゆみは体の異常を知らせるサインである事も分かってきています。人間では、がん患者さんで、がんの発見に先立ってなかなか治らないかゆみを感じることや、内臓疾患では全身に湧き上がるようなかゆみを感じることがあるようです。
犬や猫は「かゆい」と言葉にすることはできませんが、ひっかく、なめる、こする、吸う、過剰なグルーミングなどの行動を通して、私たちはかゆみを知ることができます。
犬にかゆみを引き起こす原因
かゆみを引き起こす原因として、大きく5つの病気のグループが考えられます。犬種、年齢、性別、身体検査、病歴などで、どのグループを重要視するかを判断していきます。
- 寄生虫
このグループは、初夏~秋にかけてかゆみが起こることが多いのが特徴で、ノミ、疥癬、シラミ、マダニ、蚊などが含まれます。ノミ取り櫛による検査でノミやノミの糞などを検出することや、皮膚の表面をこすることで、ニキビダニや疥癬などの検出によって診断をします。また、必要に応じてお薬を投与して、その反応をみる試験的治療を行うこともあります。 - アレルギー
このグループは、左右対称性の皮膚炎(湿疹)がみられるのが特徴で、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬物や寄生虫に対する過敏症などが含まれます。特に室内飼育の犬で、例えば食物アレルギーを診断または除外するためには、アレルギー用フード(除去食)を与えることがあります。アレルギー用フードにより皮膚症状が改善し、原因と思われる食品を与え症状が再発した場合、確定診断となります。 - 感染症(炎症)
このグループは、ふけやかさぶたなどの皮膚病変を伴うことが多いのが特徴で、細菌、真菌や酵母などが含まれます。皮膚表面の微生物をスライドガラスに付着させ顕微鏡で確認し、必要に応じ培養検査を実施します。また、試験的な治療を行い、かゆみの重症度を評価する場合もあります。 - 心因性(ストレス性)
このグループは、犬にとっての生活や環境の変化がきっかけで発症するのが特徴で、ライフスタイルや犬の性格が、皮膚病の発症に関与している場合があります。具体的には、体格にあわないケージ、ケージに長時間閉じ込められる、チェーンで長時間つながれるなどで、さらには同居動物との不仲なども問題を引き起こす可能性があります。心因性の場合、尾をかむ、側腹をすう、足先をなめる、肛門をなめるといった行動がみられます。ストレスによるものかどうかを判断するためには、その他のかゆみを起こす原因を除外し、例えば遊ぶ時間を増やすなどの行動療法や投薬に対する反応を評価することで診断されます。 - 腫瘍
このグループは徐々に拡大し悪化する皮膚病変が特徴で、肥満細胞腫や皮膚リンパ腫などが含まれます。診断には皮膚の一部を切除する皮膚生検が必要となります。
犬のかゆみの診察
皮膚病では、問診が重要となってくることが多いので、獣医さんには、できるだけしっかりと病気の経過を説明するようにしましょう。もしあれば現在治療している病気や、過去に治療をした病気についても伝えるようにしましょう。これらが手掛かりとなる場合があります。
そして皮膚病の状況として、症状がひどくなっているのか、治療を行っていればその治療に対して反応があったか、かゆみのレベル(1日中かいているのか、時々かく程度か)、家庭内の他の動物やご家族に皮膚病が出ていないか、きっかけとなる事がなかったか、などを思い出せる限り獣医さんに説明してください。
犬のかゆみの診察では、ご家族の方からの問診が重要なヒントになることがあります。普段から様子をよく観察していただき、気が付いたことは遠慮なく獣医さんに話すようにしてみましょう。
まとめ
犬が体をかく理由について解説しました。犬にかゆみを引き起こす原因はとても多く、診断が難しい場合もあります。当院では、かゆみの原因をきちんと把握するために、飼い主様から時間をかけて、お話を伺います。そしてその内容から、獣医学的な根拠に基づき検査・診断・治療を行っております。なかなか良くならない犬のかゆみでお悩みの場合には、お気軽にご相談ください。