異物誤飲・誤食による消化管閉塞に対する外科手術症例
柴田動物病院(アニコムグループ)は、消化管閉塞の症例に対して最新の医療器具を備え、その子にとって最高の診断及び治療法を提示させていただいております。
概要
好奇心旺盛で食欲のあるわんちゃん、ねこちゃんは思いもよらない物を口にしてしまいます。
飲み込んではいけない物を異物といい、異物を飲み込んでしまうことを異物誤飲・誤食といいます。
異物の種類によっては消化管閉塞や中毒を起こし、時には命にかかわる危険性があるので注意が必要です。
原因
小さなボール(スーパーボールなど)、トイレシート、ジョイントマット、ビニールやヘアゴム、ボタン(糸付きは特に注意)、ペットボトルのキャップ
骨や竹串、爪楊枝、ヘアピン、ネジ、クギ、がびょう、薬のアルミ包装シート布、綿、ひも(特に長いものは危険)などは閉塞の原因となります。
また、観葉植物、漂白剤、人の医薬品、たばこ、玉ねぎやチョコレートなどは中毒の原因となります。
症状
消化・通過できない異物の誤飲・誤食では食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢などが多く認められ、よだれが多くでる、震える、便秘、血便なども認められることがあります。
消化管閉塞が起きると症状が悪化します。
また、薬物・殺虫剤などを誤飲してしまった場合には薬物の種類によっては中毒を起こし、消化器症状だけでなく、肝臓・腎臓などにさまざまな障害をもたらす可能性があります。
また、異物誤飲・誤食をしても無症状の場合もあります。
対応が遅れると命に関わることもあるので、少しでも異物の誤飲・誤食が疑われる場合は動物病院を受診しましょう。
消化管閉塞について
胃や腸などの消化管に異物が詰まってしまうことを消化管閉塞と呼びます。
胃に異物が停滞している状態を胃内異物といいます。
低刺激性の異物の場合、症状は軽度から無症状のケースもあり、長期間胃にとどまり、レントゲン検査等で偶然見つかるケースもあります。
しかし、胃から腸に異物が移動する際に、胃の出口に閉塞することがあります。
胃の出口は幽門といい、とても狭くなっています。
この部位で閉塞を起こすと、激しい嘔吐が続いてショックや循環器障害を起こして死亡することもあります。
また、焼き鳥の串のように尖った物の場合、胃に穴を開けてしまい、さらには肝臓や肺を傷付ける可能性もあります。
腸は胃と比較して細長い構造をしているため、中で詰まってしまうことがあります。
その状態を腸閉塞といい、腸閉塞は誤飲・誤食をしてから時間が経過して起こることがあります。
腸閉塞を起こした場合は食欲がまったくなくなり、嘔吐を繰り返す、ウンチが出ない、腹痛などの症状がみられます。
特にひも状の異物が胃から小腸にかけて詰まると小腸に広く傷害が生じるため、非常に危険です。
お腹がふくれるような場合は、腸管の壊死および腹膜炎や敗血症を起こしている可能性があり、その場合命に関わるため早急な対処が求められます。
治療
治療は催吐処置・内視鏡・手術による摘出に分けられます。
催吐処置
異物を摂取してからまだ時間がたっておらず、まだ胃に存在し、嘔吐させることで解決できそうな場合には催吐処置を実施します。
催吐処置は無麻酔で実施可能です。催吐作用のある薬剤を血管内に注射することで嘔吐を促します。
内視鏡
催吐では胃から出せない場合、串などで催吐させるのが危険な場合、まだ小腸の入り口に異物がある場合などは内視鏡にて摘出を試みます。
内視鏡にて摘出が可能な場合には麻酔は必要となりますが手術の必要がなく、基本は日帰りでの治療が可能です。
外科手術
内視鏡で摘出不可能なサイズや形、既に小腸の奥まで移動してしまっている場合などは開腹手術が必要となります。
お腹を開けて、異物の存在する胃や腸の一部を切開し異物を取り出します。
閉塞期間が長い場合や消化管の損傷が著しく壊死を起こしている場合などは消化管の一部を切除・吻合することが必要となる可能性があります。
手術を行った後は入院が必要となります。
症例紹介:消化管閉塞に対する外科手術
症例
トイプードル 11歳
経過
昨日から5-6回嘔吐を繰り返しているという主訴で来院されました。
変な物を食べた心当たりはないとのことでしたが、レントゲン検査にて、腹部に細長い管状の異物が認められました。
その後嘔吐はなくなり、食欲もでてしばらく経過観察を行っていましたが、時々嘔吐が見られるのが心配ということで第10病日に再度来院されました。
レントゲン検査にて前回と同じ場所に異物が認められたため、内視鏡検査と外科手術を行うこととなりました。
内視鏡検査
内視鏡検査にて異物は腸にあることが確認され、内視鏡での摘出は困難でしたので外科手術を行うこととなりました。
外科手術
実際の手術動画です。
お腹を開けると異物は十二指腸に停滞しており、腸を突き破って腸穿孔を起こして重度の腹膜炎と腸管の癒着が認められました。
腸の近くにある脾臓にも炎症が波及しており、脾臓は重度の炎症と一部は壊死していました。
腸切開を行い、切った部分を縫合してお腹の中を洗浄し、手術は無事に終了しました。
腸には固いリブロースの骨が詰まっており、鋭くとがった骨が腸を貫通しておりました。
飼い主様が気付かない間に食べてしまったようです。
その後3日間入院し、元気に退院されました。
Q&A
- どのような検査をしますか?
レントゲン検査や超音波検査を行います。閉塞が疑われる場合はバリウムなどの造影検査を行います。
異物の種類によってはこれらの検査で分からないことも多く、その場合は麻酔をかけて内視鏡検査や試験開腹が必要となります。
中毒性の異物の摂取が疑われる場合には血液検査を行います。
- どのような場合、手術が必要となりますか?
内視鏡検査にて摘出困難な場合は手術が必要となります。
また、確実に異物を摂取したか分からないもののその疑いが強く、嘔吐や食欲不振などの症状が強い場合は試験開腹を行う場合があります。
- どのような手術をしますか?
異物が胃にある場合は胃切開、腸にある場合は腸切開を行います。
腸が壊死している場合には壊死している部分を切除し、腸管吻合が必要となります。
- 治療にかかる費用はどのくらいでしょうか?
催吐処置にかかる費用は7,000円~
内視鏡検査にかかる費用は50,000円~
外科手術にかかる費用は100,000円~となります。
術前検査や入院、投薬代などは別途費用がかかります。
- 誤飲・誤食を防ぐためにどうすればいいですか?
わんちゃんやねこちゃんが飲み込む可能性のある物を室内に置かないようにします。
特に中毒を起こす可能性のある薬や観葉植物、食品などはしっかり管理しましょう。
留守番中や目を離した間の出来事は、何を口にしたか判断できないので、飼い主様がふだんから室内に危険な物を置かないこと、しっかり管理することを徹底しましょう。
柴田動物病院では異物誤飲・誤食に対する診断、内視鏡検査、外科手術を実施しております。
ご心配事がありましたらお気軽にご相談ください。