柴田動物病院

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どうぶつの病気

Disease

2022.10.19

犬の僧帽弁閉鎖不全症について

柴田動物病院(アニコムグループ)は、循環器専門外来を設けており、僧帽弁閉鎖不全症などの循環器症例に対して最新の医療器具を備え、その子にとって最高の診断及び治療法を提示させていただいております。


わんちゃんで最も多い心臓病であり、特に老齢の小型犬で多く見られます。
心臓が収縮して血液を送り出すとき、僧房弁が完全に閉鎖せず、血液が逆流してしまう病気です。
初期は無症状ですが進行すると肺水腫などの命に関わる状態(心不全)を発症することがあります。
早期発見と適切な治療により進行を遅らせ、心不全の発症を抑えることができます。


原因

僧帽弁が加齢などにより変性してうまく閉じなくなることで起こります。
僧帽弁とは左心室と左心房を仕切る弁であり、通常の血液の流れは左心房→左心室→大動脈→全身と一方通行に流れます。僧帽弁の閉鎖不全が起こると血液が左心室から左心房へ逆流し全身に血液を十分に送り出せなくなります。逆流量が増えると心臓を押し広げ心拡大が進行していきます。この疾患の初期は、体がなんとか正常の状態を保とうとして、心拍数を多くしたり、あるいは手足の血管を収縮させたりして、通常状態を維持しようとする代償機能が働き無症状ですが、進行すると代償しきれず心不全を引き起こします。
変性した弁が元に戻ることはなく、多くの場合病状は徐々に進行していきます。


好発犬種

中高齢の小型犬で多く認められます。
日本ではチワワ、マルチーズ、トイプードル、ポメラニアン、ミニチュアダックスなどの小型犬で多く、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは遺伝的に本疾患の好発品種であり、若齢時に発生することが知られています


症状

初期の段階では症状はありません。疲れやすくなったり、寝る時間が増える程度です。
病状が進行すると、あまり動きたがらなくなり、咳や呼吸困難、チアノーゼ(血液中の酸素が不足し、皮膚が青っぽく変色すること)を起こしたり失神するようになります。僧帽弁閉鎖不全症が重度となり、肺水腫*を発症すると呼吸が苦しい、眠れない、チアノーゼが持続するなどの症状を呈し、呼吸不全から死に至る場合もあります。


肺水腫とは

肺に液体が溜まった状態のことを指します。
心臓が血液をスムーズに送り出せないと血液中の液体成分が血管の外に染み出し、肺に溜まってしまい酸素を取り込むことができなくなり呼吸困難を起こします


僧帽弁閉鎖不全症のステージ分類

病気の進行具合によってステージ分類されていて治療法などが変わってきます。

ステージA

心疾患のリスクが高い犬(チワワ、キャバリアなど)が分類されます
心臓の状態に異常は認められず、症状はありません

ステージB1

聴診で心雑音が聞こえるようになります。
弁の変性や逆流はありますが心拡大はなく、症状はありません
定期的な心臓の検査を行い、状態を確認していきます。

ステージB2

心雑音が大きくなり、画像検査では心臓の拡大が認められます。
このステージでもほとんど症状はなく、あったとしても軽度で、疲れやすい、咳などの症状が出てきます
この頃から薬での治療が推奨されます。

ステージC

心雑音、心拡大が進行し、肺に水が溜まってくる段階です。
過去に肺水腫を起こした症例も含まれます。
内服薬の量や種類が増えます。

ステージD

心臓の病態はさらに進行し、薬を飲んでも症状がコントロールできなくなります。
肺水腫や失神、食欲不振と行った症状があらわれ、死に至ります。


診断

レントゲン検査:心臓のサイズの評価、気管や肺の状態を確認します。

正常犬
僧帽弁閉鎖不全症の犬

僧帽弁閉鎖不全症が進行した犬には心拡大が認められます。(僧帽弁閉鎖不全症の犬のほうが正常犬に比べて矢印の部分が長くなっています)
また、肺水腫の場合には肺が白く写ります。

肺水腫の犬

正常犬と比べて、丸の部分が白く写っています。

エコー検査:僧帽弁閉鎖不全症の確定診断には超音波検査が必要となります。

心臓の弁の状態、内腔の大きさ、異常血流の有無、血流の向きや速さを測定します。
左心室や左心房の大きさを評価することで心不全の重症度を判定すると共に心不全リスクを予測することが可能です。

左画像:僧帽弁の逸脱が認められます
右画像:カラードップラー検査にて異常血流を確認します
左画像:左心房の拡大が認められます
右画像:ドップラー検査にて流速を測定します

治療

2019年に発表されたアメリカ獣医内科学会(A C V I M)のガイドラインを参考にして治療方針をご提案しています。

内科治療

内科治療は根治治療ではなく、進行を遅らせたり、症状を抑えることが目的となります。
基本的に生涯にわたる治療が必要となり、病気の進行具合に合わせて薬の内容を見直していくので定期的な検査が必要となります。

ステージA治療の必要はありません。定期検診を行い心臓の状態を確認していきます。
ステージB1治療の必要はありません。定期検診を行い心臓の状態を確認していきます。
ステージB2強心剤や血管拡張薬といったお薬で治療します。
ステージC利尿剤や降圧剤の追加など行います。酸素室を提案する場合もあります
重度の肺水腫では入院にて治療します。
ステージD高容量の利尿剤、強心剤、降圧剤などを用いても病状をコントロールできない状態であり、
状況に応じた治療が必要となります。

外科手術

内科治療とは異なり、根治を目指した治療となります。
重症度の高い場合や進行が早い場合などは人工心肺を使った外科手術の適応になります。
手術は近畿動物医療研修センターの心臓外科専門チームによって実施され、僧帽弁形成術(腱索再建術+弁輪形成術)を行います。


予後

心不全(肺水腫)を発症した犬の予後は、内科治療を実施していても中央生存期間は約1年と報告されています。
当院では僧帽弁閉鎖不全症に対して高性能の超音波検査機を用いて熟練した獣医師が検査を行うため、短時間で正確な検査を受けることが可能です。定期的に検査を行い、重症のわんちゃんでも病態に合わせた治療方針をご提案しています。
僧帽弁閉鎖不全症について気になることやご心配がある場合は、お気軽にご相談ください。


さいごに

僧帽弁閉鎖不全症は、予防が難しい病気ですが、日常生活において、肥満や塩分の高い食事は心臓に負担をかけるので注意が必要です。
早期発見により、投薬などを行って病気自体の進行や症状の発現を遅らせることができるといわれていますので、定期的に聴診などの健康診断を受けることが大切です。
ご自宅では、犬の運動時の様子や安静時の呼吸数をチェックしましょう。
咳や運動をすると疲れやすいなどの症状がみられた場合は、早めにご相談ください。


症例紹介

症例1

症例トイプードル 8歳 
診断名 僧帽弁閉鎖不全症ステージC、肺水腫
経過昨日の夜から呼吸が荒く、苦しそうにしているという主訴で来院されました。
レントゲン検査の結果、重度の心拡大と肺水腫が認められ、
エコー検査では僧帽弁変性と重度の逆流が認められ、僧帽弁閉鎖不全症に伴う肺水腫と診断、入院して利尿剤や強心剤、酸素室などで治療を行いました。
3日後には肺水腫は改善し、元気になって退院されました。
退院後は2-3か月ごとに心検査を行い、状態に合わせて薬の種類や量を調整しています。
現在、肺水腫になってから約2年半が経過しましたが、5種類の心臓薬の内服を頑張ってくれていて元気に過ごしています。

症例2

症例ミニチュアダックス 9歳
診断名僧帽弁閉鎖不全症ステージB1
経過ワクチン接種時に心雑音を指摘されて循環器診療を受診しました。
レントゲン、エコー検査の結果、雑音の原因は僧帽弁逆流によるものと診断。
心拡大は認めず、ステージB1と診断しました。
薬での治療はまだはじめずに6か月ごとの定期検査を行っています。

当院では循環器診療を行っています。
僧帽弁閉鎖不全症について気になることやご心配がある場合は、お気軽にご相談ください。

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