犬の慢性腎臓病(慢性腎不全)に対する再生医療症例
くずのは動物病院では、慢性腎臓病(慢性腎不全)の症例に対して再生医療(幹細胞投与)による治療を行っております。
症例① チワワ 16歳 去勢雄
診断名:慢性腎臓病ステージⅢ
経過:1年前から血液検査にて腎臓の数値の悪化があり、他院にて内服や点滴などの治療を受けていましたが1か月前から症状が悪化。入院点滴を5日間行いましたが食欲不振、活動性低下といった症状に改善はなく、血液検査上の数値も良くならなかったため、再生医療での治療を希望し当院へ来院されました。
来院時の状態
一般状態:食欲がない、元気がない、ふらつく
幹細胞投与前の治療:自宅での皮下点滴1日1回、リン吸着剤内服、食欲増進剤内服、腎臓用療法食
治療
当院での再生医療による治療:脂肪由来の間葉系幹細胞を点滴で1回投与しました。
結果
一般状態:食欲がでてきてドライフードまで食べるようになりました。また、ふらつきがなくなって元気にお散歩に行けるようになりました。
血液検査結果:腎数値の改善が認められました。
投与前 | 投与7日後 | 投与30日後 | |
BUN(mg/dl) | 101 | 43 | 69 |
CRE(mg/dl) | 3.9 | 3.4 | 3.2 |
SDMA(μg/dl) | 79 | 55 | 37 |
症例② トイプードル 15歳 避妊雌
診断名:慢性腎臓病ステージⅡ
経過:他院での血液検査にて3か月前から腎臓の数値の悪化が認められたため、再生医療での治療を希望し当院へ来院されました。
来院時の状態
一般状態:元気がない
幹細胞投与前の治療:リン吸着剤内服、腎臓用療法食
治療
当院での再生医療による治療: 脂肪由来の間葉系幹細胞を点滴で1回投与しました。
結果
一般状態:とても元気になりました。
血液検査結果:腎数値の改善が認められました。
投与前 | 投与30日後 | |
BUN(mg/dl) | 33 | 28 |
CRE(mg/dl) | 1.6 | 1.4 |
SDMA(μg/dl) | 33 | 33 |
まとめ
慢性腎臓病は治療を行っても完治することはなく、徐々に進行していく病気です。
治療には点滴や食事療法、活性炭やリン吸着剤の内服などがありますが、それらの治療にも限界があります。
当院では慢性腎臓病に対する新たな治療法として再生医療による治療を行っています。
本症例では一般的な治療では改善が乏しかったたため再生医療を実施しました。
細胞投与後には症状が良化し、血液検査にて腎数値が改善しました。
Q&A
- 再生医療はどのように行うのですか?
点滴にて静脈内に幹細胞を投与します。麻酔の必要はありません。
- 今行っている治療は中止しないといけないのでしょうか?
一般的な腎臓の治療と並行して幹細胞治療を受けていただくことができます。今まで行っていた治療は継続していただきます。
- 再生医療にかかる費用はいくらでしょうか?
幹細胞投与にかかる費用は1回7万円となります。その他、点滴代や検査代が別途かかります。
- 再生医療による副作用はありますか?
これまでのところ、重篤な副作用は報告されておりません。投与後の一過性の発熱、嘔吐や下痢などが数例報告されております。
- どんな子でも効果が期待できますか?
残念ながら、すべての症例で効果が認められるわけではないと考えられています。特に、ステージが進んで重篤な症例では効果がないことがあります。慢性腎臓病と診断された場合はお早めにご相談ください。
慢性腎臓病(慢性腎不全)についてお悩みの飼い主さまがいらっしゃいましたら、当院までお電話でお問い合わせください。