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Disease

2021.07.27

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)とは

免疫介在性溶血性貧血(Immune-mediated hemolytic anemia : IMHA)は、自分で自分の赤血球を攻撃してしまうことで貧血の症状に陥る自己免疫疾患です。

自己免疫性溶血性貧血と呼ばれることもあります。

好発犬種としてはマルチーズ、シー・ズー、プードル、コッカー・スパニエル、アイリッシュ・セッターなどが知られており、女の子のワンちゃんで発症が多いことが報告されています。

免疫介在性溶血性貧血の原因

発症の原因ははっきりとわかっていません。

ワンちゃん自身の免疫機能が自分自身の赤血球に対する抗体を作ってしまい、その抗体が血管、脾臓、肝臓、骨髄などにある自分自身の赤血球を攻撃し破壊してしまいます。

遺伝的な素因や、感染性微生物や薬剤の副作用、悪性腫瘍など他の病気が引き金となって起こる二次性のものもあります。

免疫介在性溶血性貧血の症状

食欲不振や元気喪失、疲れやすくなり動くとすぐに息切れをするなどの一般的な貧血の症状がみられます。

貧血によって舌や歯茎などが血色を失い、普段のピンク色から白っぽく見えるようになります。

その他に、赤血球の色素が尿に溶け濃い色の血色素尿や、白目や皮膚が黄色くなる黄疸などの症状が起こります。

免疫介在性溶血性貧血の治療法

お薬で免疫機能を調節することで赤血球の破壊を食い止めます。

一般的にはステロイドが使用されることが多いですが、症状の強さによりシクロスポリンなど免疫抑制剤を合わせて使用することもあります。

貧血が重度の場合には輸血や、呼吸を楽にするために酸素室にて治療を行うことがあります。

お薬での治療で十分な効果が得られない場合には、赤血球が破壊される場所の一つである脾臓を手術で摘出することもあります。

残念なことに、ワンちゃんにおける急性のIMHAでは死亡率が高く(30~80%)、出来るだけ早期に適切な治療を開始してあげることが重要になります。

急性期が過ぎ、比較的容体が落ち着いている場合でも治療には数ヶ月かかることが多く、いったん完治した場合でも再発することが多いとされています。

猫の免疫介在性溶血性貧血

ネコちゃんもワンちゃんと同様に、IMHAを発症することがあり、貧血・黄疸・血色素尿などの症状がでます。

発症の原因ははっきりわかっていませんが、猫白血病ウイルス(FeLV)やヘモプラズマ(ヘモバルトネラ)への感染がきっかけで起こることが多いと考えられています。

治療が遅れると重症化してしまう場合があるため早期発見・早期治療が重要となります。

赤血球の破壊を抑制するために、異常な免疫機能を調整してあげることが治療の中心となります。

一般的には免疫抑制効果がある副腎皮質ホルモンを投与しますが、症状によってはその他の免疫抑制剤なども投与します。

治療は数ヶ月かかることが多く、いったん完治した場合でも再発することがあるので注意が必要です。

免疫介在性溶血性貧血の細胞治療

近年、再生医療・細胞治療の研究がさかんになされており、免疫介在性溶血性貧血に対しての細胞治療の効果も報告され始めています。

当院でも、イヌの皮下脂肪由来間葉系幹細胞を用いた細胞治療という最新の方法でIMHAに対する治療を行っています。

細胞のもつ抗炎症・免疫調整作用を利用することで、従来の治療で効果のない、もしくは再発を繰り返してしまうIMHAのワンちゃんに対して貧血の改善をもたらし、治療薬を減薬・休薬する効果が期待されています。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の治療例

※当グループ病院の他院の治療例となります

5歳のトイプードルですが、嘔吐、食欲低下、貧血の症状があり、かかりつけの動物病院様へ来院されました。
そこではステロイドや免疫抑制剤の投与等の治療を行いましたが、思ったような効果が得られないとのことで、細胞治療を実施することとなりました。

IMHAは自分の免疫で赤血球(血液の中で酸素を運ぶ役割)を破壊し、酸素不足になり、貧血状態になってしまう病気です。

細胞治療前は、ステロイド等を使用しているにもかかわらず、赤血球の値(ヘマトクリット値)が25%程度しかありませんでしたが、細胞治療実施後は45%程度まで増加し、貧血を改善することができました。

細胞治療後の赤血球の値(ヘマトクリット値)の推移

また、ステロイドを止めることもできました。
ステロイドは、上手に使用すれば効果が高い一方、長期間使用すると副作用が大きくでてしまう欠点があります。

細胞治療前は1日5mg(体重1kgあたり1.2mg)を摂取していましたが、少しずつ減量することができ、最終的に赤血球の状態を維持しつつもステロイドの投薬を止めることができました。

ステロイド投与量の推移

幹細胞治療の流れ

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幹細胞治療は、細胞のもつ炎症を抑える働きや、組織の線維化を抑制させる働きを利用することで、腎臓の炎症を抑え、腎機能の維持・回復が期待できる最先端の治療法です。

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)についてお悩みの飼い主さまがいらっしゃいましたら、当院へお気軽にお問合せください。

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